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Battle Anima “俺”と武装神姫のアルトが繰り広げる、愛のあるユニークで豊かなバトルの日々…そんな感じで、ひとつ。 * * * Who s Who - ひるいなき とうじょうじんぶつたち -? * * * Show No Mercy - なさけ むよう - 前編? Show No Mercy - なさけ むよう - 後編? * * *
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B.S.L(Busou Shinki Laboratory=武装神姫研究所) スバルの父親、長月元が勤めている神姫を「研究・開発」する施設。 ここでは、新たな神姫を開発し、それを各企業に提供する。 また、既存の神姫たちのデータを研究し、俊敏性の強化や耐久力の強化などを行っている。 CSCも貴重なこのご時世に、新たな低コスト・高性能CSC「CSP(コア・セットアップ・パッチ)」も開発中。 狼型MMS KTX01W1 狼襲(ロウシュウ) 予想CV:水橋かおり B.S.Lが、Kemotech社の新商品として開発・提供した神姫。 狼をモチーフにしており、他のKemotech製神姫よりもスピードが速い。 ただし、スピードを活かすために防御力が極端に削られている。 また、コストもかかることから試作機が三体までしか作られず、商品化は見送られた。 性格上はとても明るく、自分が商品化されない境遇でも「大丈夫だから」と笑っていられる。 三体は以下の通り。 狼襲(壱型) 一番初めに作られた試作機。 スピードの調節が設定されておらず、走る内にオーバーヒートを起こし炎上した。 狼襲(弐型) 壱型の後継機。 スピードの調節を行い、冷却性能を向上。 壱型よりは幾分マシだったが、AIの処理能力の低下で、廃棄処分される。 狼襲(参型) 狼襲の最終型。 スピード・冷却性能・AIの処理能力、どれをとっても神姫としての基本性能を凌駕している。 しかし、コストと製作時間が掛かるため、量産化(商品化)されなかった。 狼襲(参型)は、元が手掛けており、「この子を大事にしてやって欲しい」との理由で、 スバルに渡された。 武装 襲牙・雷砲(しゅうが・らいほう) 中~遠距離[ランチャー] 襲牙 近~中距離[ナックル] 襲牙・雷鉄(しゅうが・らいてつ) 近距離[特殊] 甲冑・狼牙(かっちゅう・ろうが) アーマー 翔燕・速脚(しょうえん・そくきゃく) 脚部 戦乙女型MMS TSFX01 ヘルムヒルデ 予想CV かわしま りの B.S.Lが、初期(2年前)に開発した神姫。 当初予定されていた新型CSC『ダークネス※1』と共に提案され、 実戦試験を行うが、先に騎士型サイフォスがロールアウトしてしまったため、 プロジェクトは破棄され、ヘルムヒルデ自体も機能停止された。 しかし、時を経てこのプロジェクト(CSCは除く)が復活し、一体のみだが試験体が再び構築されることとなった。 名前の由来は、北欧神話の「ヘルムヴィーケ」・「ブリュンヒルデ」から「ヘルム」と「ヒルデ」をもじった。 武装 魔槌・ミョルニル 近距離[両手・打撃] 魔銃・ラグナレク 中~遠距離[片手・両銃] スキル:神々の黄昏 魔楯・ヴァルハラ シールド[防御] ニーベルンゲンの指環 アクセサリー[特殊] スキル:オーディンの加護 タロットカード 中~遠距離[特殊] ルーンの刻まれたカードが展開され、出たルーンに応じて攻撃が下る。 フレイア 頭部 エインフェリア アーマー(1) ヨルムンガンド アーマー(2) フェンリル 脚部 ※1 CSCダークネス KARASUことレイヴン…『望まれぬもの達』の共通CSC。 効果は、 1.AIの無駄な動作の禁止 2.絶対服従(逆らうことは出来ない) 3.意思に関係なく、神姫を文字通り破壊するまで攻撃し続ける 1はプラン上あったものだが、2と3はKARASUのオーナーが勝手にプログラミングをしたもの。 別の名を「亡者の叫び声」。
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そのに「回顧録・一」 僕がのティキを所有する事になってから、日はまだ浅い。 今僕と共にある武装神姫――ティキは、元々亡父の物。言わば形見だ。 つまり僕は自分の神姫と付き合っていく上で、ティキを一から育てると言うメリットを放棄させられたワケだ。 そして手探りで半ば完成されたティキというパーソナリティーを理解していくと言うデメリットだけを負わされた事になる。 それを少しでも克服したいと(愚かにも)思った僕は、夜中にただ一人で無き親父の書斎へと向かう。 ……冷静に考えれば、こんな考え方だから僕は振られたのだろうか? ちなみに、本来神姫はただ一人を『オーナー』と認識したら機能『停止』、観念的に言ってしまえば『死亡』するまで変更することが不可能なのだ。が、ティキの様な『オーナー』死亡の場合に限り、別オーナーへの再登録が認められる。 それまでの神姫のパーソナルをそのまま引き継ぐ為には、わざわざ必要書類をそろえて、郵送し、更にメーカーと再契約しなければならないけど。 それはさて置き。 親父はマメな人物でもあったから、もしかしたらPCに痕跡ぐらいは残ってるだろうとそう思ったのだ。 果たしてそこには『日記』と記されたフォルダが残されていた。 ……痕跡どころじゃねーよ。そのものだよ。 ともあれ、僕はそのファイルを開く。 ○月○日 この日俺はついに武装神姫に手を出してしまった。 こんな事家族に言ったらもしかしたら妻は離婚を言い出すかもしれない。 息子に言ったなら、俺は軽蔑され、冷たい視線を受ける事になるだろう。 でも、お義父さんの神姫を見ていたら、どうしようもなく、たまらなく羨ましくなったのだ。それはもう仕方が無い事なのだ。 俺は食事、団欒の後、なるべく自然に書斎へ戻ると、逸る心を抑えられずすぐさま神姫のパッケージに手をつけた。 MMS TYPE CAT『猫爪』。 俺は焦りながらも慎重に、とにかく家族に気付かれない様、細心の注意を払って開けてゆく。 そこには夢にまで見た神姫が、眠るようにいた。 俺は早速神姫を起動させる。 何かしら説明の様な事をきった後、彼女はおもむろに俺に言った。 「愛称と、オーナー呼称を登録してほしいですよぉ♪」 ……この子は何で歌うように喋るのか? お義父さんの所の娘達は普通に話していたのに??? 「どうしたのですかぁ?」 にっこりと笑って俺を見る。と言うよりそんなものを登録するという事実をすっかり忘れていた。 「……あーすまん。チョット待ってくれ。考える。」 「ハイですぅ♪」 目の前の神姫はそういうとその場でぺたりと座った。 あーかわいいなぁ。……いや、そうじゃない、考えよう。 どうせなら変わったのが良いな。でも愛称は変すぎても可哀想だ。と、俺が頭を捻っている間も彼女は俺をジッと見つめている。……愛らしいなあ。 はた、とそこで思いつく。 「オーナー呼称の方、先でも良いかな? 『旦那さん』と呼んでくれ」 「『旦那さん』ですねぇ♪ ……登録したですよぉ♪」 そういうと彼女は「旦那さん、旦那さんですぅ☆」と何度も言って机の上をピョンピョンと跳ね回った。 そんな彼女を見ていると微笑ましくなる。……正直に言えば、ニヤニヤしている自分を自覚する。 そんな彼女の様子を目で追いながら、俺は愛称を考えていた。 「ダメ大人じゃねーかよ!!」 僕はただただ、PCの前で突っ伏した。なんだか日記も妙に読まれる事を意識した書き方だし。 でも、それと同時に戦慄した事が一つ。 ……確実に僕にもこの親父の血が流れていると実感した事。 終える? / つづく!
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熱き心魂──あるいは二日目その一 さて、“鳳凰カップ”という祭りもいよいよ折り返しを過ぎ二日目。 今日も昨日同様……いや、それ以上に私・槇野晶と“妹”のアルマは 出典ブースの準備に余念がない。何せクララ……もとい梓とロッテの “大番狂わせ”は、良かれ悪しかれ多少の注目を集めてしまう物だ。 MMSショップ“ALChemist”のホームページにも、問い合わせが幾つか 寄せられていた。恐らくブースへの来客数も微増するだろう、有無。 「というわけでだアルマや、今日は朝からかっ飛ばして良いぞ?」 「え、ええっ!いいんですか!?……レパートリー無くなりそう」 「一向に構わん。全力全開、魂の限りを込めて唱い上げるのだ!」 「……はいっ、精一杯……唱える限り、あたし……唱いますね?」 本当は誰かに手伝ってもらいたかったが、梓とロッテは決勝ブロックの 説明を受けねばならぬ故、武装一式を持って入場時に別れたっきりだ。 こういう時に手を貸してくれる係累はいないし、“オーナー”とて原則 店の経営自体には不干渉だ。今後も決して、表に出る事は無いだろう。 アルマは客引き……を兼ね“己”を表現する為、ブース内のステージで 唱うのが仕事だ。なので、今日も私一人で此処を切り盛りする訳だな。 『只今よりゲート開門いたします!皆様、二日目も頑張ってね~っ!』 「……にしても昨日もそうだが、妙にノリノリだなこのウグイス嬢め」 「なんというか、マイスターみたいな印象受けますよね……あ、いえ」 「ちょっと待てアルマ、私はあんな可愛げ満載の雰囲気ではないッ!」 「そんな事はないんじゃないかな、小さなレディ達?十分、可憐だよ」 思わず噴きそうになりつつも、慌ててアルマから手を離し正面を見る。 そこにいたのは既に幾人か並んでいる客達だった。その先頭にいたのは 以前クララの初戦を務めた“アラクネー”のオーナー、前田氏だった。 ……この様な歯の浮く台詞が言えるのは、彼だけだ。間違えはしない。 無論、アラクネー嬢も一緒だ。とは言っても、彼女はスーツ姿だがな? 「げふげふ……貴様ら、アラクネーにウチの服など入り用なのか?」 「服その物は某の趣味ではないが、ネクタイだけなら良さそうでな」 「えっと……そう言えば、そうですね。ネクタイなら、合うかも?」 「アルマ君、だっけ……君は、ライブの準備をしなくていいのかい」 「あっ!?す、すみません今すぐにしますからっ!あうう……ッ!」 前田氏に急かされて、アルマが楽屋の用途を為すコンテナに飛び込んだ。 その合間に私は、アラクネー嬢のスーツに合うネクタイを見繕ってやる。 そして彼らを捌ききり、次の者を応対する頃……それは唐突に始まった。 ハンディ・シーケンサーによるパーカッションの音色に続き、弾ける弦。 それは地中海の潮風を思わせる軽快なリズム、それでいて勇壮な音色だ。 『♪ビルの林-おか-に小さな躯晒して、水面に映した想い出-かげ- 汐の様に遠ざかる日々……それでもあたし、振り返らず進むの 暮らした昔大事にしたい!でもねもっと、今を輝かせたいッ! 星無き遙かな黒天-よぞら-に、茜-あさひ-の色を宿したいの! 現在-今-が果てに過ぎてもあたしの想い、決して消させないよ そうよ──────忘れないの、この傷-むね-の痛みはッ!!』 題名は“朱金-あかね-の夜明け”。ラブソングなのか戦いの挽歌なのか 良く分からぬのだが、作詞作曲等全ての作業をアルマが行ったらしい。 アルマに言わせると『あの人の声には、届かなくてもいいんですよ』。 つまりは自らの言葉で、声で……そして想いで、曲を作りたいらしい。 こういった行為は、まさに神姫の“創造性”の極北とも言えるだろう。 テンポの速い曲故か、あっという間に……4分足らずで独唱は終わる。 「う……うおおぉぉー!?唱ってる、神姫が唱ってるぞぉーッ!?」 「戯けッ!怪物でも見る様な声を出して、それ程驚く事か貴様ッ!」 「いやだって……この娘“アルマ”だっけ、ストラーフでしょ?!」 「有無。だが戦いだけが神姫の姿ではないのだぞ、この服の様にな」 喚く男性客……恐らくは高校生か?……を一喝しつつ、私は思い出す。 現在の様にMMSが神姫として……更には“武装神姫”として、規格の 統一が為される前の試作期に何タイプか存在した、“神姫”達の名を。 故あって、私は神姫の黎明期……試作段階の逸話を色々と知っている。 その頃は音感能力特化型等、実に様々な能力を持つ神姫が試作された。 中でもとあるタイプに属する一人の神姫は、“訃報”が報じられた程に 一過性ながらも人々の話題となった、言語処理系特化型の神姫である。 そうか、もう大分経つか……“武装神姫”以外を知らぬ者も多い筈だ。 『えっと……皆さんッ、今日も“鳳凰カップ”に来てくださって……』 『Woooooooooooooooooooooooooooo!!!!』 『……あ、ありがとうございますっ!このお祭りに花を添えたくて!』 そんな感慨も、アルマの声に惹かれて訪れた客達への応対と、それ以上に アルマの前に群がってきた“観衆”の熱い叫びに、早々と掻き消される。 ……にしても、何十人いるのだ?今日は“鳳凰カップ”の決勝戦である。 そちら目当ての方が必ず多い筈で、しかもこのブースは“祭典”で用いる 簡易型テーブル3~4台分の幅しかない。それなのに、この盛況振りだ。 『恥ずかしかったけど……今日は一日唱い続ける事にしましたッ!!』 「凄い人手ですね、決して大きくないブースなのに買い物客も聴衆も」 「む?貴様ら……戸田静香とココか。暇潰しに来た……いや、違うか」 「まさか。私も個人ブランドをやっているんです、気は抜けませんよ」 客の列に紛れてやってきた戸田静香と、会話をする。そう言えば彼女も “TODA-Design”という銘で、エルゴ等に神姫用衣装を提供していた。 不敵に笑う彼女らしい動機とも思えた……のだが、真実は違う様だな。 そして私達を後目に、アルマの挨拶で“観衆”は一気に燃え上がった! ……この場合“萌え上がった”でも間違っていない気がするな、有無。 「静香が“ライバル”の偵察をしたい、って建前で……もごもご!?」 「あくまでこれは偵察なの。そうでしょココ?ごめんなさい、晶さん」 「まあどちらでも私達は構わぬ。存分に見て、聴いてゆくが良いぞ!」 『拙いあたしの唄ですけど、少し疲れたら聴いていって下さいねッ!』 『アルマちゃーんッ!!いーじゃん、いーじゃんすげーじゃんッ!?』 『次は“妹”を題材にした……“天空-あおいそら-の鳥”ですッ!!』 『Woooooooooooooooooooooooooooo!!!!』 ──────不死鳥の様な心は、皆も生き返らせるんだよね。 メインメニューへ戻る
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第2話 「開始」 チビ悪魔と暮らす事を決めた次の日。 まずはブソーシンキ…「武装神姫」について無知極まる俺に対するお勉強から始まった。 チビ悪魔の長ったらしい説明をかいつまんで話すと、武装神姫ってのは「EDEN-PLASTICS」っていうバカデカい多国籍企業が去年……つまり2036年に発売してから爆発的な大ブームになったオモチャのこと。 しかしたかがオモチャと侮るなかれ、そのシェアはいまやとんでもない規模らしい。 このチビ悪魔を作った「島田重工」は元々航空機用だの工業用ロボットだのの製造で有名な大会社だし、他にも国内有数の製鉄会社「篠房製鉄」や世界的トップデザイナーが起業した「GOLIフューチャーデザイン」、トドメにゃヨーロッパ系軍事産業の勇「カサハラ・インダストリアル」までもが参入して、今現在も続々と関連企業は増えているという。 ……正直言ってビックリしたってぇか呆れたね。 世界は平和だ。 で、そういうオフィシャルメーカーから色々発売されている専用パーツはもとより、アンオフィシャルのオモチャさえ流用可能という拡張性の高いカスタマイズ性(チビ悪魔によると『公式アナウンスは出来ないけれど世間では暗黙の了解』だとか)が人気を呼び、さらにはネット上での登録によるイメージカスタマイズやドレスアップコンテスト、神姫同士を戦わせるバトルサービス……なんてのもあるそうだ。 ハイテクな話にはあまり興味もなく、アレコレと関係ない話で混ぜっ返しながら聞く俺に、根気よく話してくれたチビ悪魔の根性はたいしたモンだった。 話が一段落したあたりで、オレンジジュースを一口。 俺は百均で買った紙コップ(後で洗うのがめんどくさいから)だが、コイツには手ごろなサイズのコップなんか無いんで、ペットボトルのキャップだ。 んくんく、と器用にジュースを飲んでいる悪魔を見て、ふと思いついた事を口にしてみる。 「それにしても、お前って悪魔タイプなのに礼儀正しい喋り方だよな。 神姫ってみんなそうなの?」 「いえ、出荷時にランダム設定されますので、性格は個体ごとに違います。 無邪気な子や大人しい子、元気な子、悪戯が好きな子、オシャレが好きな子、バトルが好きな子、嫌いな子……様々です」 「ふーん。 で、お前はどんな性格なワケ?」 えっ、と一瞬口篭もったあと、おずおずとこっちを見上げてきた。 「……あの、笑いませんか?」 「んにゃ、別に」 「……その……バトルに興味が……」 「へー意外」 「笑わないって約束したじゃないですかぁ!」 「いや笑ってない笑ってない。 なんか掃除とか洗濯とかのお世話関係が好きそうかなーって思ってただけで」 「そういうのも嫌いじゃないです……というか好きですけど、『特訓』とか『パワーアップ』という言葉には憧れがあります」 …つくづく意外だ。 いや、「実は好戦的」ってのは悪魔らしいというべきなのかね?
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私を動かすのは闘志 マスターに命令されたからやるのではない 私自身が闘いを望むから 私は征く 鳳凰の翼の一翼として 鳳凰杯編 「蒼い翼」 差し込む日差しは青白い まだ奥様は寝ている様だったが、正直高揚していた私は充電もそこそこに起き出していた 高揚している・・・か 理由は一つ、間近に迫っている鳳凰杯だ 結局、私は選手として参加する事に決めていた 奥様と、この家に住む他の神姫も一応会場までは足を運ぶつもりの様だが、それは同時に開催される諸々のイベントの為だ 私は・・・そういう所では心からこの家の住人達と判りあう事が出来無い 否、それはある意味ではマスターにしても同じかも知れない 「神姫に人権を」と叫び続ける私のマスター川原正紀・・・そんなマスターだからこそ私の好き勝手にやらせてくれているのだろうが、同時にその行動原理に埋め様の無い私とのギャップを感じる 武装神姫は武装神姫・・・人ではないのだから人権等に意味は無い これが私の今の所のスタンスだった 人が命懸けで闘うと、悲しむ人が多いが、私達武装神姫は闘う為に作られたのだから、少なくとも戦う事に関しては、誰からも何も言われない 私達が私達らしくある為に必要なのは、人と同じ様な権利等では無い様な気が、私はずっとしていた 「つまりそれは戦士が戦士らしくある事の権利にも似て・・・か?」 馬鹿馬鹿しい。戦士である事に権利等要らない・・・自分が戦士らしくあろうとすればそれで良い 闘争を望む人々の熱狂と視線の中で闘う事が幸福だ 勝利の感動に酔い痴れる事が祝福だ 敗北の苦痛と屈辱に塗れる事が必要だ 何よりも幸いな事に、我々には戦場が与えられているではないか・・・! それで充分だった 「いかんな・・・考え過ぎだ。誰かに似てきたかな?」 私に必死になって闘う理由を問うて来た神姫の顔が浮かぶ 私の理由は、今はもうただ「戦士でいたいから」に絞られていた 闘いたいから闘う、そして戦う場は用意されている・・・闘う術も武器もあり、勝利の栄光もある それだけで既に私達は、人間より余程幸福だとすら思える 「・・・ん・・・おはよう御座いますクイントスさま・・・」 「ん?あぁ、おはよう、ヌル」 窓際に腰掛けた私の姿が、今の彼女にはどう見えただろうか? カーテンを揺らす風が、どこか熱い息吹を孕む春だった ぎしゅっ!ぎぃんっ!! 白刃が、閃く ほう、受けたか・・・真っ二つになると思ったが・・・ 受け止められたそこを支点に、私の体が宙を舞う・・・やはり彼女が、才能面では最高だ だがまだまだ・・・それを生かし切れていない 空中で姿勢を変え、落下ではなく着地の構え・・・襲い来る「魔女の剣」・・・そんな見え透いた攻撃にはあたってやれんな 私が、空中で、回避運動が、出来無い等と、何時言ったのだ?エルギール! エルギールの防剣を支えに、腕力で再跳躍。空中で太刀を振り、魔女の剣を迎撃、無事着地には成功する 着地点に打ち込まれる銃弾・・・『ストリクス』か。馬鹿め、私を狙う時は弾幕を使えとあれ程言っておいたのに、まだ「ワンショットワンキル」等と言う夢物語を追いかけているのか? ぎぃん 銃弾を受け止め、両断。そのまま刀身を跳ね上げて再び迫る「魔女の剣」を迎撃する 狙撃点の割れた狙撃手と、距離を取られた柔使い等、どうとでもなる 爆散する「魔女の剣」・・・面白い武器ではあるがその耐久力ではな 再度打ち込まれる銃弾・・・狙いが甘過ぎる。受ける迄も無い 掴みに掛かって来たエルギールを逆に掴んで、その力を利用して振り回す。 もう少し『待ち』に徹する事を覚えろ、余りにもこらえ性が無さ過ぎるぞ・・・エルギールの体に三発目が着弾する 狙撃がそんなに好きならミサイルで蟻でも射つのだな!凄まじい長距離と凄まじい小目標物だぞ 大体 私程度の動きを負えない様では 本当に高速戦闘に特化したアーンヴァル等相手では 射つ前にやられるぞ!! 2発射って外してしまった時点で、ストリクスは私に射撃の呼吸を読まれるという愚を冒している・・・これでは本来サイドボードを導入する意味も薄いが、今回は練習だ、使っておく事にしよう 「エンジェール!カームヒアーー!!」 ダッシュしながら叫ぶ。同時に転送されて来るサイドボード、バーチャルの空気に溶けて消えるエルギール 気に入りの濃紺のマントが消滅し、代わりに装備される白い翼と長銃 別に取り立てて珍しいものでもない。加速のみが目的の背負い型のダッシュブースターと、飛翔のみが目的の羽根付きグリーヴだ 右腋にホーンライフルという名の槍を構えて空中から殺到する羽根付き騎士か・・・使い古された絵面で面白くも何とも無い 両脚を振り回してジグザグに飛びながら、ダッシュブースターを目一杯に吹かす・・・ようやく四発目。仰角に修正するのが遅過ぎる 場所は既に割れている、あとは普通に狙いをつけて ぱすんぱすんぱすん 終わった 別にそんな長大でいかつい砲を装備せずとも、少し工夫してやれば市販ライフルでも充分反撃されにくい攻撃は可能だ・・・「ツガル」が何の為にこういう装備をしているか考えた事も無かったのか? ジャッジマシンの勝利宣言を、私は殆ど聞かずにログアウトしていた 「随分厳しく言ったじゃない?相当頭にきてたわよ?ストリクス」 「頭に来てくれないと困る」 兜を腋に抱えつつ、大げさに肩を竦める 「何でよ?」 「ストリクスがもっと技術を磨いてくれないと、私は誰から狙撃の技術について学べば良いんだ?」 噴出すエルギール。割と本気で言ったのだがな 「何それ?セカンドランカーの大物に習えば良いじゃない・・・ホント貴女ってちぐはぐだわ」 「気心の知れた相手から学んだほうが気が楽に決まっている・・・それにストリクスは堅実で努力家だ。やればもっと伸びる筈なんだよ」 「いっその事キャロねえやヌルにならってみたら?」 「キャロは狙撃は苦手なんだ・・・当然ヌルじゃ話にならん。むしろあの子はもっと蹴り技の訓練をだな・・・」 「あぁはいはい。ホントもうお腹痛いわ。神姫なのに笑い死にとか勘弁して欲しいっての」 相手が私だろうと下位ランカーだろうと同じか・・・私はこの子のそういう所がかなり気に入っている 「大体皆私を褒め過ぎるんだ。天才とかゆらぎとか、そんなものは大昔の負け犬が考えた逃げ口上だろうに」 「それ、あいつにも言ってたわね、もう耳にタコよ。婆臭い!」 「楽しそうだね」 団欒風景に割って入る十倍ストラーフ・・・じゃない神浦 琥珀 「注文の品、出来たよ」 言いつつ神姫大の黒いケースを三つ、私の前に並べる 「これはマイスター、ありがたい」 言いつつ早速開けて見る 「これは・・・」 出て来るのは計4振りの刀剣類だ ギミック付きの鞘に収められた厚手のダガーが二振りに、私が今使っているものよりやや柄の長い日本刀が一振り、そして「コルヌ」にはやや及ばないものの、かなりの長さと幅を持つ青錆色のロングソードが一振り 「密着戦での防衛力を重視した『ディフェンダー』と、少し居合いに使う事も考慮した『神薙Ⅱ』・・・そして君の音速剣を無制限に放てる耐久力の『鳳凰』だ」 『鳳凰』を手に取り一度振るう・・・心強い重みと重厚な外観が、強烈な破壊力と強度を予感させた 「振ってみて良いだろうか?」 「構わないけど、店の外にしておいた方が良いと思うよ」 相槌だけ打って店の裏手に回り、大き目の小石に向かって振り下ろす 硬い音は、両断の手応えより僅かに遅れて聞こえた 刃毀れは・・・無い 減衰したインパルスが、数十メートル先の電柱の張り紙を揺らしたのが確認出来た パワーロスが大きいが・・・まぁ慣れでなんとかなるだろう 「少し先太りになってて小回りが利きにくいけど、結構刃は薄いから、なるべく鍔迫り合いはしないでね・・・まぁ並みの武器には負けやしないと思うけど」 「パーフェクトです。マイスター。有難う御座います」 「『クイントス』お墨付きとあったら、ここいらじゃそれだけで凄い箔が付くからね。売名行為だよ。あんまり礼を言われると心苦しいな」 長大な割りに直線の刀身を鞘に収めるのは難儀したが、腰に佩いて見ると「コルヌ」よりは様になっている・・・それでも少し長いか?マントとあわせるのが難しいな 「鳳凰杯、あさってだね」 「あぁ」 「君みたいなのに僕みたいなのがこういう事言うのもなんだけど、頑張ってね」 「マイスターのこの剣と、私の誇りに賭けて!無様な闘いは曝しません」 一息に・・・抜けた。『鳳凰』を胸の前で両手で構え、掲げて見せる 青緑色のつやの鈍い刀身が、夕日に煌いていた 鳳凰杯・まとめページ 剣は紅い花の誇り 次へ
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「ホントにやるのー。戦えるようになったんだろうねー?」 「はい! 大丈夫です」 暇を見つけてもらって、今日はゲームセンターに霧静さんとアリエに来てもらった。 イスカと戦う前にアリエと戦っておく。 あの熱を持った赤い大剣状態をちゃんと克服できているかどうかのチェックをしておかないと安心はできないからだ。 「ごめんね、この前来れなくて。シオンちゃんの勝ったバトルを見てみたかったのだけど、どうしても用事が外せなくて」 「ううん、そんなことないって。そう思ってくれてるだけで嬉しいよ」 霧静さんが申し訳なさそうにしている。 真剣にシオンを思ってくれている。 そんな優しさがありがたい。 「バトルの前に霧静さんとアリエにお願いがあるんだ」 普通にバトルするだけじゃなくて、これを言っておかないといけない。 「うん、なにかな?」 「あの『ヒート・カートリッジ』だったかな? アレを使ってバトルしてほしいんだけど」 「えー、アレかー。制限時間があるけどいいかなー?」 使うの制限があるのか。それは誤算だけどまあいいだろう。 勝ち負けが問題じゃないし、アレを出されてちゃんと立っていられるのかが問題なんだ。 「うん、それでもいい。でも、本気でお願いするよ」 「もちろんだよー。あははー」 何が楽しいのかアリエは笑う。 いっつも笑顔だね、アリエは。 「嬉しそうだね。アリエ」 オーナーの霧静さんもアリエが上機嫌なのが不思議らしいが、 「うん、そだよー。前は変に終わっちゃったからねー。もう一回、私の闘争本能に火をつけたんだからさー、生きて帰れると思わないでね――」 「……うん。でも、もうバトルの準備しましょうね」 「――私はまだ力を隠し持っているんだから、それを出すのはシオンの実力次第だー。この前より強くなっているのだとしたら、私も全力を持ってお相手していただくよー。私の前で5分間立っていられたら褒美を……って、あれ~~?」 霧静さんはアリエが調子にノる前に、早口で何か言っているアリエを手で持って、向こうのブースに連れて行ってしまった。 僕はそれを横目で見送った後、シオンを見てみる。 「アリエさんに勝てるでしょうか? 自信がないです」 「僕としては赤い大剣を見て、シオンが立っていられるかどうか心配だよ」 「それは……多分、大丈夫ですよ。はい」 どこから来るのか、小さい身体に自信が溢れている。 前回ではトラウマを引き起こしたのに、なぜかそっちの方は心配してないのかシオンにそんな素振りはない。 僕の杞憂だったのだろうか。 ……いや、まだ安心はできない。 やるのと仮想でイメージするのとはわけが違うんだから。 ―――― 前回と同じように廃墟街のステージだ。 今度は最初から隠れて進むとか不意をつく作戦とかではない。 真っ向からぶつかれるように広い場所で両者は対面させている。 「よっし、じゃ行くぞー!」 「お願いします!」 アリエは前と同じ兵隊のようなアーマーをつけて、エレメンティアを両手で持ち構えている。 対するシオンは両手にぺネトレートクロ―・烈、そしてファイティングポーズを取り、武道家のように気迫を発し続けていつでも動ける態勢。 「『エレメンティア・ヒートカートリッジ』セット! いくよー!」 エレメンティアに赤いカードを差し込むと、たちまち刀身は真っ赤になる。 剣の周りはゆらゆらと蜃気楼現象のように空気が歪んで見える。 あれが発動した。 それで、肝心のシオンはどんな様子だ? 「……すぅ……はぁ……」 呼吸をしている。 いや、それは当り前なのだけどあれは深呼吸に近い。 顔は真っ直ぐ向き、目はちゃんとあの赤い大剣を見据えている。 「へー、あれから随分と頑張ってきたんだねー。前と違って闘気ってゆーのかな? そういうのが違うねー」 「はい、ありがとうございます」 本当にあれすらも克服しているらしい。 すごい成長ぶりだ。 あの時の戦いからシオンはリミッターが外れたのか? いやはや、凄いとしか言いようがない。 「ふ、それじゃ、いくよーん。今度は本気で立ち向かうから来なさーい」 「行きます!」 そして両者はぶつかり合った。 「せりゃー!!」 「はぁー!!」 シオンは駆けて右のナックルで殴りかかる、アリエは上げた大剣を振り下ろした。 ガンっ! 打ち合った瞬間、周りの地面、場の建物が振動し出した。 ギギギッとナックル対大剣の押し合いが続くが、アリエは振り下ろしと両手で、と諸々の力はあっちの方が上だ。 そうなるとシオンが押され気味になるのだが、シオンは左腕を肩まで上げ、左のナックルもエレメンティアに叩きつける。 もう一回ガンッと響くと、両手と両手。それでやっと両者は拮抗しだした。 シオンは下から上なのになんで互角なんだろうか? ……あ、そうか。 普通、ゼルノグラードは火器型特性だから、大剣は使いづらいものなんだ。 武装神姫で得手不得手があるはずなんだから、あの差もわかる気がする。 でも、ゼルノグラードが大剣を使って強いという事はアリエ自身かなりの練習量をしてきたんだろう。それが試合からはわかる。 「ぬぅーー!」 「くぅーー!」 二人とも押し合いから武器を引き離さず、そのままの状態が続くが。 シュ~ッと。 煙がペネトレート・烈の先から出てくる 刃が熱を持っているから、ナックルが焼きついてきてるんだ。 「はあはあ、ここまで持ちこたえるとはやるねー。シーちゃん」 「はあはあ、アリエさんもものすごいです。大剣をそんなにまで使いこなして」 「努力の結晶ってやつだねー。でも、この大剣はそんじょそこらの大剣とはわけが違うのさー。不思議に思わないかなー? このエレメンティアにはトリガーがあるのになんで引かないのかってさー」 あの大剣にはトリガーがある。 だがそれを使ってないということ。 話しで聞いたゲームでは確かあれは…………マズイ! 『シオン、後退して!』 「もう遅いよー! 燃えろ、ドッカーン!」 僕がシオンに命令してエレメンティアからナックルを離そうとして逃げる瞬間、アリエがそう言うと大剣の引き金を引いた。 擬音を口から出した時、剣からも擬音の通り剣先から爆発が起きた。 「くっ!?」 シオンが灰色の煙に包まれた。 爆発の衝撃はどうなった。 ――シオンは無事か。 「へー、これを耐えきるかー。さすが熱血型」 間合いを離したアリエが口元は笑っているが、本気で驚いている。 「……ガードできてなかったら危なかったです。それと熱血型ではなくて私は山猫型です……はぁはぁ」 アリエが言ったことに律義に訂正させてからも、シオンは息を荒くさせている。 どうやらシオンは腕をとっさに交差させて、身を守ったらしい。 その証拠に両腕は煤こけたみたいに、黒くなっている。 だけど、使っていたナックルのぺネトレート・烈はどこかに吹っ飛んでいったのか、シオンの手元にはなくなっていた。武器はあれだけではないけど、なくなったのは痛いな。 「今から説明するとねー、この剣はカートリッジに入ったエネルギーを剣に流し込むと“属性”を付加することができるんだー。 そしてそのエネルギーを使い切る前にトリガーを引くとそのエネルギーを爆発させることが出来るんだー。それがこのエレメンティアの力さね」 アリエは自慢げにそう話している。 エレメンティアについて話してても陽気さが表れている。というか話したくてうずうずしてたみたいだ。 自慢したくてたまらなかったといった感じに見える。 だけど、その話を聞くとファンタジーにあるみたいな魔力を使う魔法剣みたいだ、と僕は思った。 さすがはあの店長さん。武装神姫にそんな力を与えるとは侮れないお人だ。 でも、シオンはその爆発のエネルギーをガードしきった。 すごい威力なはずなのに、ガードしきれるとはシオンってそんなに頑丈だったのか。知らなかった。 「でも、その大剣の事をそんなに話していいんですか。一応私は今、敵なんですけど」 「あははー。この力って有限だからねー。あんま万能ではないんよー。これって長所であり短所だからさー、黙っててもアドバンテージにすらならないんだよねー」 特殊能力を持った剣ではあるけど、欠点も多くあるらしい。 火器型であるのだから、大剣使いとしての能力がつきずらいんだな。 「毎日素振りを千回し続けた結果、火器型でありながら私は大剣を少しは使いこなせるようになったのさー」 「……それ程の回数。素振りをするとは、すごいですね」 「嘘だよーん」 「そんな!?」 変なコントが起きているが、このままアリエとの話しが引き延ばせたら……。 話が伸びているおかげで、シオンの息切れも治まってきている。 霧静さんが気付いていたらアウトだけど、どうだろうか。 「そのまま使うだけでは相手の方は倒せないんですか?」 「いや、ダメだねー。なんていうのかな、やっぱ私って現実問題、火器型ゼルノグラードじゃん? 大剣の特性値ってあんまないんよー。最初の頃の使いづらさっていったらもう死にたくなるねー」 もう少し。 「それだけで死んではダメですよ。ちゃんと前を向いて生きなくてはいけません」 「いや、例え話しっしょー。本気にしないでよーもう。面白いなー、シーちゃんはー。あははー」 よしそこで、フェリスファングを取り出して―― 「あー!! いけないなー。そんなもの取りだしたらー」 「く、」 カンッカラカラと。 フェリスガンが手から弾き飛ばされ、後ろに滑って行った。 なんでだ? アリエは近接武器のエレメンティアしか使わないはずなのに。 「言ってなかったっけー? 重・軽火器の類は一切使えないってー。でもさ武装の種類には投擲武装っていうものがあるのを忘れてはいけないよねー」 左手を前に出したダーツの矢を投げたような態勢のアリエ。 そしてシオンの後ろにはフェリスガンと一本の『フルストゥ・クレイン』が。 くそ、投擲武装を持っている可能性もあったのに、あの間延びした態度ですっかり油断していた。 戦闘中、アリエはもうちょっと緊張感持った喋り方をしてほしいよな。どうして、二人は気にしないのか。不思議に思うが。 ……そんなことより、結構絶対絶命の危機的状況だよな、これは。 フェリスガンはシオンの後ろに、ぺネトレートクロー・烈もどこかにいった。 どうするか? 「こっちの隙をうかがっていたんだねー。まあ、私もリミちんに言われなかったら引っかかっていたけどー、あははー」 霧静さんにはやっぱり気付かれてたみたいだ。 霧静さんもかなりの実力者。いや、なんで僕がこんな偉そうなんだよ。僕より武装神姫のオーナー歴は先輩なんだから当たり前じゃないか。 アホなこと考えてないで、実際どうしようか? あちらはまだアレを持ってそうだからな。 背面キャノンのバリスティックブレイズは却下だ。動きが大きいから遠距離からでしか通用しないし、その前にやられてしまう。 それ以外ならこっちの武器はあとナイフしか…………あ、それ以外もあった。 『シオン、僕の言うとおりにして作戦は………で……………あれを』 「え、……あ……はい。わかりました」 作戦を伝え終わると、シオンは僕の言ったことが伝わったようで、頷いてくれた。 「まだ、なにか企んでるー? でももう無駄だよー。ほら」 手元には青いカートリッジが転送されていた。 別の属性付加のパーツか。 アリエはそれをエレメンティアに差し込もうとしている。 でもそれが来るのは――こっちは予測済みだ。 「ふっ!」 瞬間で身体を前傾にさせて駆けだすシオン。 駆けだすと同時に手に持つは一振りのナイフ。 それを先ほどのアリエと同じように投擲。 エレメンティアに入れようとしていた青い付加パーツに向かって真っ直ぐ。 あのパーツは差し込むのに若干の猶予があるからそのタイミングを待っていたんだ。 「アタっ!」 パーツに当たれば良いと思ったが、手元にも当たったのか、手を押さえ悶え始めたアリエ。 これは好機だ、いけシオン。 ……あれだ。あれを出すんだ。 「いっけぇ! てりゃー!」 近くで沈み込んでから渾身の――右アッパー。 格闘技を題材にした小説を見て、編み出したこの技。 名付けるとしたら『ライジング・アッパー』 これを使わせるとは、アリエ恐るべしだ。 この技は膝ジョイントをバネにしてから、腰・肩・手に力を移動させ神姫の拳に全威力を乗せた必殺のアッパー。 本来はナックルの武器系統を装備して、その上から殴るのが本来の使い方なのだけど威力は十二分にあったみたいだ。 それがアリエの顎にクリーンヒット。 「グハッ」 浮き上がりその後倒れたアリエの傍に瞬時に寄り、近くにあったナイフを拾う。 ナイフが近くにあるのも計算通りだ、本当に。 それをアリエの首元にシオンはスッと軽く押し当てた。 神姫のノーマルな拳ぐらいでへばるような武装神姫たちじゃないだろうからだ。 「どうです? 降参しますか?」 「いたぁー。手加減してよ、もぅー。降参でーす」 やった、終わった。僕もなんか疲れたなー。 ―――― 「痛ったー、なんでただの拳だけであんな痛いのさー」 バトルが終わると霧静さんとその肩に乗ってアリエも向こうから来た。 アリエは顎を手に当てて、顔をしかめている。 「す、すいません。アリエさん」 「謝る必要はないよ、シオン。これは真剣なバトルだったんだからさ」 「そうよシオンちゃん。最後の最後で油断してたアリエも私も悪いから」 「へーい、すんませーん」 オーナーの霧静さんにそう言われて、すごすごとアリエは黙ったようだ。 実際にバーチャルじゃなかったら、どのくらいの威力があったんだろうか。 アマチュアのボクサーぐらいのパンチ力があったらいいな。僕たちが必死に考えた必殺技だったんだから。 「でも、本当に見違えちゃったな。シオンちゃんすごく強くなったね」 「ありがとうございます。螢斗さんとの鍛錬のおかげで戦えるようになりました」 いや、ちょっとしたきっかけで出来るようになったんだから、そんなに持ち上げることはないのでは、とシオンに言おうとしたのだけど場の雰囲気が勝手に進み言い出しづらくなってしまった。 「はー、前にもこんな風に負けたことあったよねー。あの頃はエレメンティアをろくに扱えてない若い私だったねー、うん」 「若いって……そんなに経ってないからね。前に使った戦法があるけど今日は準備不足だったみたい」 霧静さんもアリエも自分の戦い方を考えて、勝ったり負けたりしてきてるみたいだ。 強く思えても、色々な積み重ねが必要なんだな。 と、僕が思ってたら、アリエがふっと思い出したように手を叩く。 「そうそう。とりあえずさー、これで赤い大剣の状態は克服できてたから、これで因縁の相手と戦えるんだねー。私にも勝ったんだから、必ず勝ってよねー」 「お姉ちゃんと……」 アリエが言ったことを聞くとシオンは顔が暗くなる。 僕が無理矢理決めてしまったけど、シオンにはやはり辛いことだったのだろうか。 ――いや、そうだよね。 実の姉ではないとしても、元は家族の一人だったんだから、家族と戦いたいなんて誰も思わないよ。 「怖い?」 姉と戦わせるなんて僕はなんてひどい奴なんだろうか。 戦えるようにはなったんだから、シオンが望むならこのままでも……。 そう思い、シオンの目を見つめ言葉を発しようとした。 けど。 「大丈夫ですよ。私は螢斗さんの物ですから。螢斗さんの思うがままに」 「シオン……」 それを聞いたら、僕の涙腺が緩くなってしまったが……気合いで我慢した。そんなところを霧静さんやアリエに見られたくなかったからだ。 僕を安心させるよう少し演技が入ったような口調。 自分にも言い聞かせるみたいなそんな感じ。 もう、戦う事から逃げることはないと思える瞳をしている。 姉と戦う決意も一緒にそこから感じられた。 「うわー。ケートんの物とか言ってるよー。大胆発言だねー」 「長倉くんはシオンちゃんにすごい思われてるんだね。……それに比べてこっちは……はぁ」 「こっち見てため息とか、ひっどぉー! それが自分の神姫に対する態度かー」 僕たちの横では、別の戦いが勃発しようとしていた。 それでも二人はすごく仲が良さそうに見える。 神姫と人には色々な関係があるんだなと僕は場違いにも思ってしまった。 前へ
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武装神姫のリン 第8話 「ホビーショップへ行こう!」 「ほらほら、亮輔! 先行くよ~」 「ま、待て、俺の状態を見て言ってるのか…」 俺たちは茉莉の新しい衣服や日用品などの買い物に来ている。 というのも茉莉の通う大学がこっち(わざとこの辺の大学選んだんじゃないかと邪推できるが)らしく、 それで結構広いマンションに1人暮らしの俺の家が推薦されたそうだ。 もちろん親からの連絡もナシ。と思っていたが家に帰ると手紙が届いてた。遅いんだよ…… そして茉莉は家に着くなり俺の寝室の隣の空き部屋を占領した。 しかし家具はもちろん(クローゼットぐらいは備え付けてあるが)、持ってるのは大学で使う参考書、文房具のみ。 衣服の代えさえも3日分しか持って来てない。 そうしてさっきの手紙には「おまえがちゃんと買い揃えてやるんだぞ」との1文。 今日の騒動で手にした100万の小切手がとても尊い物に見えたのは内緒だ。 そして明日が日曜と好都合なので一気に買い物をしてしまおうということになった。 そうして俺たちは今、巨大ショッピングモールに来ている。 今の時点で俺の引くショッピングカートにはコレでもかというぐらいの物品が載っている。 「マスター、お力になれなくてすみません」 リンが苦しそうな俺を見て言う。 「いや、これは俺の仕事だ。リンもティアもほしいものがあれば茉莉に言えよ。今日はヤケだ全部買ってやる!」 「本当ですのね、ご主人様。 じゃあれとコレと……」 ティアは茉莉といっしょになってここぞとばかりにカートにいろんな物を押し込んでくる。 そろそろカートがいっぱいになろうかといった時、さっきまで物を1つもねだらなかったリンが聞いてきた。 「マスター、コレ……良いですか?」 「??」 リンが俺に見せたのは、神姫向けでは無い普通のぬいぐるみ。 テディベアだった。値段は……ゼロが4つ。 本場モノだった。 「良いぞ、まだまだお金はある。」 「ありがとうございます。 マスター」 そうしてショッピングモールでその後は茉莉専用のTVなどの家電製品を買った。 基本的に食料は買ってないのでそれらを全て宅急便で時間指定で届けてもらうことにして俺たちは昼食(コレもまたいつもは行かない高級志向なお店で神姫向けの特別コースもあった。)を取った。 その時点での出費の合計は。35万。 まだ65万余っている。コレなら今月は悠々自適な生活が送れるだろう。 そう思っていた。 帰宅しようとしたら、また茉莉が言い出した。 「近くにいい神姫センターを兼ねたお店知ってるんだけど、行かない?」 ティアやリンにはまだ昨日買う予定だった衣服などを買ってあげていなかった。 出来れば今夜にでも、もう1回出かけるつもりだったが家に着く家電製品のセットは俺が全部することになるだろう、 そう考えると体力が持たなさそうなのでこの際一気に済ませようと思った。 そうして俺が連れてこられたのは普通の町並みにある普通の玩具屋といった感じのお店。 店舗の規模に対して大きめの看板には「ホビーショップエルゴ」と書かれてた。 俺は茉莉に連れられて店に入った。 「店長、こんにちは。」 「ああ、茉莉ちゃんか、ひさしぶりだね。」 「今日は人を連れてきたよ」 そうして予想外の品揃えに驚いていた俺の首を引っ張ってきた。 「こんにちは~店長の日暮夏彦です。 よろしくね」 「は、はい、どうも、藤堂 亮輔です。」 「それにしても……茉莉ちゃんとはアツアツかい?」 「は? 意味が良くわかりませんが」 「え?彼氏じゃないの?」 「え~っと、彼氏ではないですね。 勝手な婚約が交されたりしてますが…」 「そうそう、彼氏じゃないよ~ まあ亮輔なら結婚してあげても良いかなってレベル」 「……そうか、亮輔君がすこし羨ましいな。 おっと、紹介しよう。ジェニーだ」 オレは目線を下げる、そこには……とても昔のバラエティ番組のキャラにそっくりなヴァッフェバニー 即ち素体が無く、バニーの基本セットにある胸像パーツを改造したボディのみがいた。 「ジェニーです。 当店にお越しいただきありがとうございます」 「ああ、よろしく。」 そんな感じで挨拶を済ませて、店の中にいるであろうリンやティアを探してジェニーにあいさつ……ってリンさん? ナゼオレのモモを思いっきりつねってるんですか? 「マスタァ…婚約ってなんですか? あとでお話を詳しく聞かせてもらいますね」 文字でたとえると「にっこり」な笑顔、でも額になにか血管みたいなのが浮いてる状態でリンはオレがもっているカゴにここれでもかといた勢いで店内の神姫向けパーツを入れていく。 「もちろんここでもヤケ買いですよね?マスター」 そんな、今まで誰も聴いたことの無いドスが利いた声を出さないでくださいリンさん…… そうしてオレのカゴにはリンによって選ばれた手製の衣装(なんでも専門家の手作りを品質そのままで量産レベルにしたものらしい)と、 この店オリジナルの武装パーツ(照準調整済みのコルトパイソン+スピードローダーセット、ストラーフのセカンドアーム向けの斬魔刀などコアな製品が多いか? それにティア用の新型アーマーやランディングギア、最新モデルのレーザーライフルも抜かりなく入れてある)や、なぜかうさみみ・うさしっぽといった愛玩向けのパーツが、 ティアによって店内の一番奥。子供は入っちゃいけないマニアックなコーナーからボンテージ衣装に鞭、 なぜか星座の戦士の使うチェーンまで同封の鎖セット、極めつけはろうそくって何に使うんだよソレ!!てな感じの代物が満杯に入っていた。 そして最後に店長と話していた茉莉が俺を呼ぶ。 「亮輔、 訓練機買わない?」 オレはそろそろティアの分の訓練機を買わなければと思っていたところだったのを思い出す。 で早速勧められた訓練機を品定めする。 最初に店長に勧められたのは店内で一番高い品だった。 だが、家にあるのがファーストランカー向け製品であることを話すと店長は倉庫から訓練機本体より少し小さめの箱を取り出してきた。 「そうなるとこれだな、 ファーストランカー向け製品は処理能力がハンパじゃない。 だからいちいち別に2個目を買わなくても追加モジュールで大丈夫だ。」 そうしてオレに渡されたのは追加の座席モジュールと接続ケーブル。そして補助のCPU、メモリがついた補助モジュール(形状は正に PCI Expressの拡張カードそのものだった。)のセットだった。 これで価格はランカー達に一番多く普及しているタイプの訓練機の半額である。 その価格に驚いていると店長はもう1品を俺に手渡す。 「そしてコレがウチ特製の追加モジュール。うちのセンターでバトルをした神姫のデータを利用したオリジナルの訓練パターンデータをディスクに入れて格安で提供してる、ソレ専用のドライブだよ。 もちろんデータの使用許可はマスターさんに承諾済みだしメーカーにも許可を取ってる。値段は3000円ポッキリだ」 「そんなことが……ウチのリンもティアも接近戦一辺倒で遠距離戦のパターンが不足していた所です。もちろん買いますよ!」 「商談成立だね、せっかくだからドキドキハウリンのデータディスクをサービスしよう。」 「ドキドキハウリンって?」 心当たりがないを俺を見かねてか、茉莉がフォローを出してくれた 「大会に何回も出てるときにハウリンにセーラー服とか着せてる女の子見たこと無い?」 「見た。そのときは写真小僧に囲まれてた気がするな。」 「その子、ここに衣装の提供してるのよ、リンちゃんがカゴに入れたのもそう。ちなみに彼女のハウリン強いわよ、でそのデータもがもらえるの、いいことでしょう?」 「そうだな、ありがたく貰っておきます。」 「どうも、じゃあ代金なんだけど……カゴの製品が、え~とこんなに多く買うお客さんあんまりいないからすこし手間取るなぁ」 店長がレジに製品を通していく、それにつれてディスプレイに表示される金額はどんどん上がっていく。 1万、2万、3万……10万、最後に訓練機がレジを通って15万を突破。合計の品数は46だった。 明らかに今日1番の売り上げだろう。 店長も少し満足げな様子で 「ありがとう、今後とも当店をごひいきに。 またサービスしてあげるよ。」 と言ってくれた。 そうして今度ここでフリーバトルをすること、リンとティアは神姫教室に参加させてもらうということを約束して、俺たちは家路についた。 電車に乗るときには遊びつかれたのか、リンもティアもかばんの中で寝息を立てていた。 そこに茉莉が声をかけてくる。 「寝顔ってかわいいよね……亮輔、リンちゃんの反応見る限り婚約のことは全く話してないみたいだね。」 「普通はそんなこと話す必要ないだろ、仮にもっと連絡が早ければ説明してたと思うけど。」 「そっか~、じゃあリンちゃんたちの反応も当たり前だね、マスターに突然婚約者がいるなんて知ったら普通怒るよ。」 「? どうしてだ?」 「ん~~~~もう、リンちゃんの気持ち考えてあげれば分かるでしょ? いままでに何も無かったとは言わせないわよ」 ふいに俺は2ヶ月前のことを思い出す。そう、ティアとの決戦前夜、俺はリンとキスをした。 そこで気付かなければいけなかった。リンは俺をマスター以上の存在と認識しているということにだ。 いや気付いていたはずだ、それなのに大会とティアのことでそれをごまかしてただけだった。 「リンは俺をそこまで……」 「わかった? なら明日までにリンちゃんに説明すること。でも絶対に傷つけちゃだめ。」 「ああ、でも俺は正式にお前との結婚を認めたわけじゃない、それも説明するぞ、いいな?」 「うん、それで十分。ちゃんと安心させてあげなきゃかわいそうだよ。」 「わかった、とりあえず帰ったら夕飯の準備だな。 昼飯が豪華すぎてギャップに驚くなよ」 「うんうん、期待しないで待ってる。」 そうして茉莉は最寄の駅についたことに慌てる俺を引っ張って電車を降り、そのまま駅前の桜並木を歩く。 俺が理由を聞こうと思ったところに唇を重ねてきた。 でもそれは1瞬。気がつけば茉莉はいつものようにスキップを踏んで先を歩いている。 でも振り返る瞬間見えたのは……涙。 そのとき、俺は茉莉の気持ちも理解してしまった。 ふいに並木道に強い風が吹く。 春の嵐、それはオレの心を表すようだった。 その夜、俺はリンに説明をした。 でもリンは聞かなかった。そして初めてマスターである俺に逆らった。 そうしてリンはその日から茉莉がいるときはもちろん、普段もあまり喋らなくなった。 ティアも少し俯いたままになることが多くなる。 それから2ヶ月。 茉莉はいつもの様に大学へ行くし、俺は仕事をする。 リンとティアもあの時買った追加モジュールとデータディスクで腕を上げている。 戦績も最初はセカンドリーグの猛者たちに蹴散らされていたが最近は勝率も上昇傾向だ。ただリンは戦法を変え、無茶苦茶な闘いをするようになった。 そして勝利してもそこに以前のような無垢な笑顔は存在しない。使命感に駆られるような少しこわばった笑顔だ。 ネットでも「あの正々堂々とした黒衣の戦乙女が不意打ち! 何がおこったのか!」 などと、主にサードリーグのランカー達の間で噂になっている。 そして日常でも何か歯車がかみ合ってない。そんな感じだ。 日に日にリンと茉莉の関係が徐々にではあるが悪化していった。 ~燐の9 「決断!?」~
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前へ 先頭ページ 次へ 第五話 相対 眼下のサルーンと巡航速度を同調させ、クエンティンは飛んでいる。 雪が前方から真横に吹き付けるが、不思議なことに一粒も彼女へぶつかることはなかった。 風圧のせいではない。彼女の周囲にはエイダにより目に見えないエネルギー膜が張られてあって、それで雪のみならず空気中の埃を払いのけ、さらに空気抵抗を大幅に減衰させてあの驚異的な高機動性を叩き出しているのである。 彼女の顔に当たる風は突風などではなく、ほとんどそよ風程度と言ってよかった。 サルーンとの同調速度から若干落とし、クエンティンは車の斜め後方上空へつく。さらに後方の光点、エイダとおなじメタトロン・プロジェクトのプロトタイプ、彼女のいわば姉妹機にも気を配る。まだ姿は見えない。攻撃してくる気配も無かった。 同調速度へ戻し、相手が接近するのを待つ。先制攻撃は向こうへくれてやるつもりだった。一般に戦闘においては先制攻撃側が有利とされているが、エイダが『問題ありません』と言ったのでそうすることにした。 エイダは姉妹機の武装を知っているようだった。具体的にはやはり情報機密ロックに該当するようで教えられなかったが、エイダは機転を利かせて間接的にアドバイスしているのである。 すると少なくとも相手は、あのアヌビスというやつは攻撃と同時に着弾するようなたとえば直進するレーザーのような武器は持っていないことになる。他の武装は、まあ、後々身をもって分かるだろう。 クエンティンはつい先ほどの、理音と鶴畑興紀の会話を思い返していた。 思い出せば思い出すほど悔しさがこみ上げてくる。 が、神姫に人権はあるべき、無くてよいなどという当為的な議論はともかくとして、人権が無いのは事実であり、また安易に人権などもらってしまえば神姫を趣味のためのツールと考えている人間の自由を剥奪してしまうことになるのもまた事実だった。 それは認める。認めるしかない。 だが、もっと重大な懸念がある。人権が与えられたその瞬間、武装神姫はその存在意義そのものを失ってしまう可能性があるのだ。 たとえば、もしバトルがしたくて神姫を買ったオーナーの元にバトルをしたくない神姫がやってきた場合。神姫に人権が付与されていたなら、オーナーは神姫の「バトルはしたくない」という権利を絶対に守らねばならない。 絶対に、である。理解のあるオーナーならいいが、全員が全員そうだとは限らない。 他にも、「ああしろこうしろ」とむやみやたらに命令することも許されない。 それらを破ったら即刻、神姫に対する人権侵害となる。 所有者が所有物の権利を尊重するという、立場の逆転が起こってしまうのだ。 武装神姫はオーナーがお金を出して買った所有物であり、だから武装神姫はオーナーの願いや命令を聞くのであり、すなわちそれこそが武装神姫なのである。少なくとも武装神姫という商品はそう作られた。 「神姫はパートナーだ」「妹だ」「娘だ」あるいは「恋人です」「女王様でございますうぅう!」などの、オーナーそれぞれの気持ちや理解は関係なく。神姫をどう捉えるかはオーナーの自由だ。 言い切ってしまえば人間の所有物だから武装神姫なのだ。命令を聞かなければ武装神姫として存在している意味が、無い。 オーナーが「君のやりたいようにやるがいい」と言ったとして、言われた神姫が自由にしているように見えても、当の神姫は――意識的であるにしろ無意識的であるにしろ――自由にやりたいことをやっているのではなく、「自由にやれ」という命令を聞いているに過ぎない。 武装神姫は明確な意思を持っているが、しかし人権を欲することはしたくてもできないのだ。少なくとも人の所有物として生まれている今現在は。人権が欲しいなら所有物であることをやめる必要がある。武装神姫でなくなる必要が。 いま、神姫が人間らしい――という表現も、自分が神姫だということをさし引いて考えるならおかしいな、とクエンティンは思った――生活を送れるかどうかは、ひとえにオーナー一人一人の良識に全てが委ねられているのである。 それならアタシは幸せだ。クエンティンは理音に心から感謝した。 心から? うーん、やっぱり神姫に心は、意思はあるかも。少なくともアタシ自身はそう思う。クエンティンはひとまず納得した。 変わって、正義の話に関しては、いささか疑問を感じていた。 『鶴畑興紀の話には条件が必要です』 クエンティンの思考を読んだのか、エイダが答える。そのとおりだ。 彼の『個人の正義は誰にも侵害されず、また自分の正義で他人の正義を侵害してもいけない』という主張は、個人体個人の間でのみ有効な主張だ。 これがもし集団が主体となった場合、彼の主張は一気に崩壊する。 なぜならば、集団の正義は往々にして他集団や他個人の正義を侵害することで成り立っているからだ。 いや、侵害という言葉は適切ではないかもしれない。集団そのものの意識や目的はともかく、集団というものは集団であるということ自体が理由となって、どうあがいたところで他の正義(思想や権利と言い換えてもいいかもしれない)のうえにかぶさる様にできている。 簡単な例を挙げるなら、企業がある。とあるひとつのカテゴリに属する企業は、同じカテゴリにある他企業の正義を押さえつけなければ存在できない。押さえつけなければその企業は死んでしまうからだ。製造販売業ならば、他企業よりも良いものを作って売るという行動がそれにあたり、その行為は同時に他企業を押さえつける行為となる。他企業は押さえつけられたままでは滅びてしまうから、同じようにより良いものを作って、売る。 そのいたちごっこが続く。俗に競争と呼ばれるやつだ。だからこそ技術は発展し続け、消費者はより良い生活ができる。お姉さまは「このケーキおいしくなったわね」と言える。 鶴畑コンツェルンがやっていることはまさに正義の押し売りなのかもしれない。他企業を押さえつけ、自らがのさばる。それを意図的にやっている。 ふと、クエンティンは思った。他の正義を押さえつけることは、すなわち支配ということではないか、と。 「支配者って、自分の正義を他人に押し付ける人のことかしら?」 クエンティンは個人ではなく企業人としての鶴畑興紀をイメージしながら、言葉に出して言って見た。誰に訊いたわけでもない。が、たぶんエイダに訊いたのだろうとクエンティンは思った。 『無条件ならば、そのとおりです』 エイダは答えた。 ならば、私はバトルにおいては自分の正義を他人に押し付けているのだろうか? 『それは違います』とエイダは言った。 「どうして? 私はバトルで、支配者になろうとしているのよ」 クエンティンはエイダと出会う直前に考えていた、支配者になるのだという考えを伝えた。相手に支配していると気づかせない、雪のような支配者になるということを。 『バトルは認められた戦いです』 エイダは即座に返答した。はからずも理音が考えていたことと同じことだった。バトルは認められた戦いであるし、どんなに戦ったところで(神姫に人権が無いことを前提とすれば、たとえリアルバトルでも)死者は出ないから、対戦者同士の正義はぶつかり合わない。 もしぶつかるとしたら対戦者相互の個人的な感情事情のみで、その多くは「自分が勝ったら何々をして(~になり)、相手が勝ったら何々をする(~になる)」というものである。バトルの勝ち負けによりどっちの願望が実行されるかというものだ。 正義という言葉を使うなら「自分が勝ったら自分の正義で相手の正義を押さえつけても良いね」という対戦者お互いの承諾なのである。バトルという行為そのものにはまったく関係が無い。 「……そうかな?」 『そうです』 エイダはさらに続ける。 仮にバトルの中で支配者となったとしても、それは相手の正義の侵害ではなく、バトルの中で展開を有利に運べるようになったというだけなのだ。勝っても負けても誰も死なないから、取り返しのつかないことにはならない。つまりバトル後もそれぞれの正義は続いてゆくのである。 『ただし、戦死者が出る実戦であった場合、意味は大きく違ってきます』 相手を殺さなければ自分の正義の遂行が危ういのである。 実戦とか死ぬとかいう例は大げさだが、これを現実的な事象になおしてみるならば、たとえ個人対個人でも正義のぶつかり合いはある。 間に権利的か利益的、企業的な干渉があった場合(たとえば子持ちの夫婦が離婚したときの親権争い、恋敵同士による一人の女性の争奪戦、どちらか一方しかその企業との契約がとれない場合における営業担当同士の交渉戦、など)、負けた側は自分の正義、あるいは願望を貫けないのだから戦わざるを得ない。 この部分が鶴畑興紀の主張に足りない。と、エイダは言った。たとえ個人でも、正義がぶつかるときがあるのだ。 正義を物質みたいに扱っているな、とクエンティンは感想を言った。死んだらその先に物質は持っていけないというわけか。 でも、自分自身に即してみるならば、と、クエンティンは考える。神姫に人権が無いという事実は置いといて、リアルバトルで破壊される、死ぬ、のはやっぱり嫌である。もうお姉さまとお話もできないと考えると、途方も無く恐ろしかった。人工知能基本三原則の自己保存でもあるが。 そのリアルバトルを今からやるのだよな。 改めて考えると、クエンティンは突然言いようの無い恐怖におそわれた。 メインジェネレータ、人間で言う心臓のあたりの鼓動が早くなり、全身の駆動部分が陽電子頭脳からの微弱なパルスを感じてぶるぶると震え始める。クエンティンはつまり怖さで縮み上がっているのだ。 負ければ壊される。死ぬ。という恐怖。リアルバトルをやるのは初めてではない。ついさっきだってあの一つ目どもとさんざリアルバトルをやったばかりだ。 なのに、この恐怖は何だろう。やめたい、やりたくない。死にたくない。あのサルーンの中に今すぐ取って返してお姉さまの胸に飛び込みたい。 「うっ……」 引きつった声が漏れた。声だけでなく、股間部の排出口から廃熱を吸い取り切った古い冷却水も漏らしてしまいそうだった。 やばい。このまま戦ったら負ける。確実に。 『感情回路の異常を感知。沈静プログラムオープン』 エイダが報告。 すると、途端に恐怖が薄らいでゆく。全身をすっきりした感覚が走り、ジェネレータの鼓動は平常に戻り、震えも止まった。 「あ、ありがとう、エイダ」 『どういたしまして』 鎮静剤を打たれたのと同じようなものだな、と思いながら、クエンティンはお礼を言った。彼女がいなければこのままちびっていたかもしれない。 「あいつは? アヌビスは」 『変化はありません』 後ろを振り返る。光点はまだ動いていなかった。さっきから同じ速度で追いかけてきている。接近するそぶりは無い。 「まだ仕掛けてこないなんて……。おかしいな」 そう言った瞬間だった。 光点がふっ、と消えた。 「えっ!?」 『警告、脅威接近、オンザノーズ!』 エイダが叫ぶ。 ギュバッ! 聞いたことの無い奇妙な音とともに、目と鼻の先にそいつが現れた。 ピンと立った細長い耳のようなアンテナのついた、犬とも狼ともつかないフードのようなヘッドギアをかぶった神姫だった。ハウリンではない。ハウリンのはこんなに鋭角なヘッドギアではないし、なにより目が隠れない。その神姫の目は見えなかった。ヘッドギアの側面から後頭部にかけて覆うように薄いレースのようなものが首まで垂れている。 背中に八枚の羽のようなユニットを浮かばせ――背中にくっついていない――、腕を組み、右手に錫杖の形をした長い得物を携えていた。 ボディの色は今のクエンティンよりも黒に近く、胸部の球体から赤いエネルギーラインが全身に渡っている。 静かな威圧感が自分をわしづかんだように、クエンティンは感じた。 『離脱してください!』 「はっ!?」 我に返ってバックブースト。左手でエネルギーシールドを張りつつ、クエンティンは間合いを取る。 攻撃されていたら間違いなくやられていた。なぜ攻撃してこなかったんだろう。やはり捕獲するためなのだろうか。 『MMSタイプ・アヌビス、「デルフィ」です』 「あいつが……!?」 瞬間移動してきた。リアルで。ありえない! 一体どんな原理が使われているんだろう。 『ゼロシフトです』 「え?」 『いまの瞬間移動のことです。エネルギーバリアの空気抵抗減衰能力と空間圧縮技術を応用し、現在位置と移動先の空間を圧縮することで短距離の超高速移動が出来ます』 「ちょっ、ちょっと待ってよ、あいつの武装データはロックが掛かってるんじゃないの?」 『デルフィの武装データはセンサーで確認した場合公開されたとみなし、その武装に関するロックが無効になります』 つまり奴からのあらゆる攻撃は一度見なければ情報ロックが解除されないというわけだ。 「それじゃあ分からないのと大差ないじゃない……」 避けられればなんとかなるが……、所見の攻撃の回避率が総じて低いことは経験で知っている。 しかしこれでもエイダはなんとか機転を利かせてがんばっているのだ。 「ノウマンって奴、恨んでやるわ」 クエンティンはロックをかけた顔も知らない責任者に、頭の中でパンチを食らわせた。 デルフィの表情は変わらない。唯一露出している唇は結ばれたまま、ピクリとも動かなかった。 表情や仕草から意図を読むことができない。クエンティンはバトルの際そうして戦ってきた。どんな行動にも予備動作というものが必ずあり、ほとんどの攻撃はそれで対応できたのだ。 こんなにも先の読めない敵は初めてだった。いや、正確に言えば初めてではない。エイダとの融合前の、一つ目との戦いもこんな感じだった。融合後は性能差で勝てたに等しい。 クエンティンはまだ、この融合後のボディに慣れきっていなかった。 奴の意図はなんだろう。自分を壊すのか、拉致するのか。 どちらであれ、いやだった。 『目的地まであと二分です』 エイダが報告する。 ギュバッ! 同時にデルフィは瞬間移動。クエンティンの目の前に出現する。 右手の錫杖がしゃらりと鳴り、横なぎに払われる。 「ぐっ!」 とっさシールドを張って重防御。にもかかわらず鈍器で殴られたような衝撃が全身を揺さぶった。シールドの衝撃吸収機能がほとんど役に立っていない。 『距離をとって戦ってください。近接戦闘は危険です』 言われきらないうちにクエンティン、バックブースト。 ガ、ガシォーン! ホーミングレーザーを放ちつつ距離をとる。サルーンと並行しながら動かなければならないから、制御が難しい。平行飛行の操作をエイダに委ねる。これでさほど気にならなくなるが、サルーン側へはすばやく移動することが出来ない。 ヅシャシャシャ! デルフィはシールドを張りつつ錫杖をぐるぐると回転させ、レーザーを防御。レーザーは一発も有効弾にならない。 グヴィーンッ デルフィの背中から何十本もの、血のように赤いレーザーが射出された。 『ロックオンレーザーです』 エイダが言った。 しかし、鋭角的にのたうちながら迫ってくるレーザーに、クエンティンはどう避けたらよいか見当が付かない。 『可能な限りひきつけ、前方へブーストしてください』 すかさずエイダのアドバイスが飛ぶ。 「可能な限り引き付けて、って……」 四方八方から迫るレーザーを見渡し、さらに間合いを取ろうとしながらクエンティンは怖気づいた。 「抜ける隙間がない!」 クエンティンはシールドを最大出力で展開、四肢を踏ん張って耐える態勢に。 着弾。 左手がばらばらに砕け散るかと思うほどの振動がやってきた。クエンティンは目をつぶってしまう。 レーザーの嵐は止まらない。ロックオンレーザーを時間差で撃ちつづけているのだ。それでも一撃一撃が重かった。 姉妹機のくせして、アタシはこんなに撃てない! 射撃がやむ。かろうじて左手は砕けなかった。 うっかり気を抜いてしまい、そのままシールドを解除する。 『攻撃警告!』 ギュバッ! キスでもしてしまいそうなほどの近くに、デルフィが出現した。 気を取り直す間は与えられなかった。 ドツッ! 錫杖が振り下ろされ、左肩口に痛打。 「ぎゃうっ!?」 異常なパワーをクエンティンは感じた。左肩装甲にひびが入る。 そのままデルフィは錫杖を振り回してうずくまるクエンティンを文字通り袋叩きにしてしまう。 右わき腹から左大腿、胸部、右腕部、左すね。回避するタイミングを逃したクエンティンは、手足をちぢこめて耐えるしかない。 一撃で倒すことはしなかった。デルフィはわざと急所をそらして殴りつけているのだ。それでクエンティンは、こいつは自分をさらっていこうとしているのだと分かった。 こんなところで黙ってさらわれるわけには行かない。 「うわあーっ!」 ブレードを跳ね上げる。 「!」 ギュバッ! デルフィはゼロシフトで離れる。口元がやや開いている。意外な反撃に初めて驚愕の表情を見せたのだった。 クエンティンは高速の思考でエイダに指令。 〝エイダ、一番簡単なサブウェポンを手動で出して!〟 〝しかし、多大な負荷がかかります〟 〝いいから早くやって!〟 エイダは手動プログラムを開始。途端にクエンティンの頭部から煙が上がり始める。この時代において容量、計算速度、冷却効率そのどれをとってもトップクラスのスペックを誇る陽電子頭脳に、その許容をはるかに上回る負荷がかかっていた。これでいて最も軽いサブウェポン一つを呼び出しているのだ。 頭痛ががんがんと暴れだしたがクエンティンは耐えた。 右手の平にいくつもの小さな螺旋が出現。それらは銀色の球体となって顕現する。 クエンティンは球体を握り締めると、腕をぶん回し、デルフィに向けて投げつけた。 サブウェポンを使われるとは考慮していなかったのか、デルフィは瞬間移動で回避することなく球体を当てられた。 球体はデルフィのボディにくっつくと、ボディと反対の方向に細長い光を放出した。 ゲイザー。 球体の強力な推進力により対象を拘束するサブウェポンである。 『鶴畑家対空ファランクス砲の射程範囲に到達しました。進行方向へシールドを展開してください』 クエンティンは言われたとおりにする。 直後、サルーンの向こう側からオレンジ色に光る筋が高速で飛来した。筋の正体は五発に一発装填されているファランクス砲の曳光弾である。 空気を切り裂く音が繋がって聞こえる。毎分六千発以上の高速射撃により、辺りは鉛の雨と化した。 二十ミリという大口径ライフル弾の衝撃を、クエンティンのエネルギーシールドは完全に吸収していた。もはやこれは武装神姫なんかじゃない、れっきとした兵器で通用する、とクエンティンは思った。それはたぶん当たっているかもしれない。人工知能基本三原則は付け忘れたのではなく、きっと最初から付いていなかったのだ。自分が死にたくないと思ったのは自分の感情であって、きっと三原則は影響していなかった。 エイダは答えなかった。回答不能なのかもしれない。 それに、三原則無しで死にたくないと思った私は一体なんなのだろう? ゲイザーによりシールドも展開できないデルフィは、無数の銃弾を浴びて火花を散らして墜落し、見えなくなった。 あんなものでは傷をつけることもできないとクエンティンは推測した。きっといまシールドを切ったとして、二十ミリ弾ぐらいではこのボディをぶっ壊せないだろう。あいつ、デルフィも同じだ。エイダとは姉妹機なのだから。 シールドを張りつつクエンティンはサルーンへ戻る。 サルーンはそのまま巨大な正門をくぐり、屋敷の敷地内へと消えていった。屋敷は煌々と明かりが点いていた。 その後二分間、デルフィが墜落したとされる範囲に射撃は継続された。二門のファランクス砲から発射された弾丸はのべ三万発以上にのぼった。 追撃は無かった。 雪が降り続いていた。 戦いの跡も、三万発の鉛の雨のえぐった地面も、すべからく雪の支配する世界に覆われた。 屋敷の明かりが一つ、新たに灯った。 つづく 前へ 先頭ページ 次へ